技能実習制度、特定技能についてよくわからない企業様

「海外人材を活用したいが、技能実習制度と特定技能の違いがよくわからない!」

 

 本ページはそんな企業様向けのページです。

 法の趣旨や制度の詳細などは、色々な方々がご紹介していますが、

要は知りたいことは、

自社の役に立つのか?どういう違い(メリット・デメリット)があるのか?ですよね。

 シンプルにご説明します。

<目次>
技能実習制度とは? 特定技能とは?
技能実習制度と特定技能、どう対応すべき?

技能実習制度とは?

 

 技能実習制度というのは、海外の人材に対して、 OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)で、技能を習得する機会を提供する形で 3〜5年間、勤務してもらう制度です。

 

 基本的な前提条件としては、主に次の3つです。

1. 技能習得が大前提なので、技能習得とみなされる職種と作業が決まっています。
(正確に言えば、該当する職種・作業を行なっている企業しか複数年の受け入れができません)

2. 技能研修とはいえ、OJTですので、最低賃金以上は支給しないといけません。
(ただし、最低賃金なら良いというわけではないので、詳しくは後ほど)

3. あくまでも研修制度なので受け入れできる人数には上限があります。
(ざっくりですが、最初は、被保険者数の5%以内、最低3人と思っておけば大丈夫です。)

 

 企業側から見た技能実習制度のメリットとしては、 何と言っても「3〜5年間、継続して勤務してもらえる」という点です。

 生産現場としては、安定した稼働のためには、安定した人員配置が必要ですから、 技能を習得してもらう対価として、安定して働いてもらえることは大きなメリットです。

 

 かたや、企業側の責務としては、大きく次の2つがあります。

(A) 技能検定試験を受けさせる必要があります。
(1年目終了時に技能検定試験があり、合格しないと、在留ビザの更新ができません。)

(B) 毎月、監理団体による監査への対応が必要になります。

 

 制度から考えればわかりやすいのですが、 技能実習制度はあくまでも研修による国際貢献の制度なので、 まず、習得してもらう技能というものが存在します。

その一覧がこちらです。

技能実習計画審査基準・技能実習実施計画書モデル例・技能実習評価試験試験基準(厚生労働省

まずは、自社がここに書かれている職種と作業に該当するかを見ないといけません。
該当するようなら複数年(3〜5年)の受け入れが可能です。

 ただし、見方や判別方法がわかりづらいので、基本的には後述の監理団体に相談することになります。
(※ 当サイトでは、技能実習制度の職種チェックに関する簡易診断サービスをご提供しています。ご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。お問い合わせはこちらをクリックしてください。

 

 次に必要になるのが、「監理団体」です。

 監理団体というのは、監理という文字のとおり、 「技能実習制度がきちんと運用されているかを監督し、取り締まる団体」のことです。
実習生の受け入れは、基本的にこの監理団体が窓口になります。監理団体が窓口となり、企業は実習実施先という位置付けです。
(ただし、雇用は企業が直接行います)

 監理団体は、企業がきちんと技能実習を行わせているか、 給与はきちんと支払っているか、賃金水準などで違反はないか、などを監督・指導します。

 企業は、この監理業務の対価として、監理団体に対して監理費と呼ばれる費用を支払います。
この費用は、実習生1人あたりいくら、という形が基本で、費用は監理団体によって大きく異なります。

 基本的に企業が実習生受け入れを考える場合は、監理団体と相談しながら進めることになります。 (ただし、監理団体によって、監理費、対応エリア、現場対応力等に大きな差があることが、企業からすると悩ましい点でもあります。)

 

 なお、賃金については、最低賃金でOKという考えは捨てていただき、 平均の残業代なども含めた最終手取額でどれだけ支給できるかを考えた方が間違いがありません

 社会保険や家賃など控除される金額を引いて、月平均でどれだけ実習生の手元に残るか、 これが一番重要な指標になります。  この辺りを事前にきちんと設計し、説明できるかで、実習生のやる気や失踪率などが全く異なってきます。

 以上が技能実習制度の概要です。では、次に特定技能についてです。

 


特定技能とは?

 

 特定技能とは、2019年4月から施行された新しい在留資格です。

 特定技能は、研修が前提である技能実習制度と異なり、労働者のための在留資格です。(技能実習生が技能実習ビザであるのに対して、特定技能の場合は特定技能ビザになります。)

 さて、こちらも色々なところで解説・紹介等されていますが、基本的なポイントはこの2点です。

1. 雇用できる業種は14業種厚労省管轄2業種:介護 / ビルクリーニング | 経産省管轄3業種:素形材産業 / 産業機械製造業 / 電気・電子情報関連産業 | 国交省管轄5業種:建設 / 造船・船用工業 / 自動車整備 / 航空 / 宿泊 | 農水省管轄4業種:農業 / 漁業 / 飲食料品製造業 / 外食業)

2. ある程度の技能を持つ(とみなされる)人材が対象(基本は試験合格者。技能実習2号修了者は合格者とみなされ試験免除。ただし、実習との同業種に限る。)

 

 まず、業種ですが、技能実習制度の場合、技能を習得できる職種や作業が決まっていましたが、特定技能の場合は、職種・作業ではなく、業種が決まっています。

 現在、14の業種が指定されており、具体的にどの業種が該当するかは、それぞれ日本標準産業分類をもとに指定されています。(介護、ビルクリーニング、造船・船用工業、航空を除く)

日本標準産業分類(平成25年10月改定)(平成26年4月1日施行)

 

 次に対象人材の件ですが、特定技能は、あくまでも単純労働者ではなく、一定水準以上の技能を持った人材を対象にしている在留資格です。

 一定水準以上の技能を有しているかどうかは、基本は所定の試験(日本語と技能)の合格で判別します。しかしながら、この試験はまだ設計中で実施に至っていません。

 当面の対応としては、技能実習2号修了者(要するに技能実習生として3年間を無事に満了できた人)は、この試験に合格した人と同水準とみなすことになっています。つまり、無試験でOKということですね。(*ただし、随時3級不合格者で、技能実習2号修了者の場合は、必要となる書類等に細かい条件があります。)

 ただし、無試験でOKというのは、技能実習生として従事していた業界で働く場合に限られます。例えば、農業で技能実習生をしていた人が、無試験で製造業に行くことはできない、ということです。(製造業の試験を受験し、合格すれば可能です。)

 

 企業側から見た技能実習制度のメリットとしては、何と言っても

「(基本的には)職種や作業を限定されずに働いてもらえる」

「技能実習制度と異なり、人数制限がない」ということでしょう。

 従来の技能実習制度では、職種も限定され、必須作業(必ず行わないといけない作業)もあるため、作業工程も必須作業を中心に組まざるを得ませんでした。その点、特定技能の場合は、そのような制約がありません。(ただし、一部業種については従事する業務の範囲がある程度定められているものがあります。)

 また、従来は職種・作業的に受け入れができなかった企業でも、業種区分に該当していれば雇用することが可能になります。例えば、食品製造の分野であれば、従来、食パン製造は技能実習生の受け入れができましたが、菓子パン製造は受け入れできませんでした。今回の特定技能であれば、菓子パン製造でも受け入れができることになります。

 加えて、技能実習制度のように人数制限が特に付されていないこともあり、純粋に労働力確保として非常に利便性の高い形になっています。

 なお、特定技能の特徴として、通算5年間、日本で働けることになっています。ずっと5年滞在することも可能ですし、例えば6ヶ月働いて帰国し、後日、再来日することも可能です。そのため、短期スポットでの労働力確保も1つのメリットと言えなくもありません。

 しかしながら、「6ヶ月や1年間という比較的短期で働いてもらえる」とはいえ、雇用側から見ると「渡航費や住宅手配等の初期コストを吸収できるのか」という点、特定技能人材から見ると「収入額としてメリットを感じられるのか」といった課題があります。

 人手確保の緊急度と支払える給与水準などによって状況は変わってきますので、実際に特定技能が、どの程度活用されるかは、ケースバイケースというのが実際のところだと思われます。

 また、企業側から見た課題としては、「待遇(給与水準その他)をどうするか」という点があります。

 技能実習制度の場合は、あくまでも研修制度ということで、地域・業種によって定められる最低賃金が1つの基準値となっていますが、特定技能人材の場合は、一定水準以上の人材ということで、同業務に従事する日本人と同等以上という形になっています。

 実際、技能実習2号修了者(3年間勤務した技能実習生)が、1年目の実習生と同程度の給与というわけでにいかない(本人の気持ち面でも)でしょうから、特定技能人材に対する給与体系をどう考えるか等々、今後各企業で様々に検討されると思われます。

 


技能実習制度と特定技能、どう対応すべき?

 

 これは、「すでに技能実習生を受け入れている企業様」「これから検討中の企業様」で異なります。

「すでに受け入れをしている企業様」の場合は、特定技能人材の雇用もできます。

 技能実習生だけでは人手が足りない、今の実習生にもう少し在留してほしい、そのような場合は技能実習制度と特定技能を併用していくことになります。

 特定技能で、さらに新たな人材を確保したいというご要望もありますが、どこまで確保できるかは、正直なところ未知数です。現在、試験が実運用されておらず、対象となる人材は、技能実習2号修了者のみとなるため、必然的に取り合いの状況になりつつありますし、実習生として従事していた職業の証明書類をどう確保するかなど、今後解決が必要とされる課題がいくつか出てきています。この辺り、随時情報を入手していく必要があります。

 「これから検討中の企業様」の場合は、どちらが良いか等を考える前に、まず職種や業種が該当するかを見ることが先です。

 職種が該当していれば、両方対応できますし、職種が該当しなければ業種で該当するかをチェックします。

 職種が該当する企業様の場合、事業内容的に通年採用が可能なのでしたら、技能実習制度から始める方が無難です。良くも悪くも監理団体が、実習生のフォロー等をある程度行ってくれますので、海外人材を受け入れるのが初めての企業様はその方が安心です。

 職種は該当しないが、業種は該当する企業様の場合は、特定技能しかありませんが、現時点では人材確保面に色々と課題がある状況ですので、受け入れ可能になるまでにもうしばらく時間が必要だと思われます。また、技能実習生を受け入れた経験がないので、登録支援機関(特定技能における監理団体に近い役割をする機関)のサポートを受けた方が良いでしょう。

 職種・業種いずれも該当しない企業様の場合は、残念ながら両方とも難しい、ということになります。

 とはいえ、自社が職種・業種に対応しているかは、なかなかわかりづらいかと思います。当サイトでは、職種・業種が該当するかの簡易診断サービス(無料)なども行っておりますので、お気軽にお問い合わせください。(こちらのフォームからお問い合わせください。

 


 以上、大枠ではありますが、「海外人材を活用したいが、技能実習制度と特定技能の違いがよくわからない!」企業様向けの解説となります。

 ただし、これらはあくまでも大枠の話、一般論の話です。結局のところ、各企業様によって状況は変わって参りますので、ご不明な点、ご相談などがございましたら、お気軽にお問い合わせ頂ければと思います。

 ご不明な点やご相談等がございましたら、こちらのフォームよりお気軽にお問い合わせください(クリックするとフォームが開きます)

 

関連記事

  1. 技能実習制度の移行対象職種外で、特定技能での受け入れを検討中の企業様

  2. 技能実習生を受け入れ済みだが、課題を感じている企業様

  3. 技能実習生を初めて受け入れしたい企業様

  4. 技能実習生制度と特定技能との併用を検討中の企業様(現在編集中です)